2011年10月31日月曜日

子育てとお金の話 前編「年少扶養控除の廃止」

申告会職員として、日々、税務や経理に携わるなかで、いろいろなことを考えます。
考えても「よくわからないこと」があれば、納得するまで調べます。
(なかには、調べれば調べるほど納得できないこともありますが・・・)
「よくわからない」状態にしておくのではなく、
とりあえずでも「知っておく」ことが、
次の判断や行動へつながる大事だと感じているからです。

そんなわけで、これから2回にわたって、
今私が皆様に知っておいて欲しいと思う話を、
子供にかかわる税金や社会保障、給付等の話題を中心にお伝えしたいと思います。


前編は、「年少扶養控除の廃止」について、です。

23年分の確定申告から、中学生以下(15歳以下)の年少扶養親族がいる方を対象とした扶養控除(年少扶養控除)が廃止されます。
控除がなくなるということは、課税所得が増え収めなければならない税金が増えるわけですが、
具体的にはどのくらい増えることになるのでしょうか。

青梅市在住のAさん<家族構成:妻(青色事業専従者)と小学生の子供2名、事業所得:350万円>
を例に試算してみましょう。
(ちなみに、この事業所得350万円を給与所得者の方の年収に置き換えると、500万円程度になります)

仮に、22年と23年における家族構成や所得、所得控除等の諸条件が同じであるとした場合、

22年分所得税 98,000円 + 22年分住民税 213,500円 = 311,500円

23年分所得税 174,000円 + 23年分住民税 279,500円 = 453,500円

となりますので、所得税と住民税をあわせて、142,000円の税負担増です。

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[参考]この142,000円という数字は、こう読み解くこともできます。
22年までは存在していた扶養控除額、所得税分38万円、住民税分33万円に
それぞれの税率(Aさんの場合ともに10%)を掛けて合計すると7万1千円になります。
この7万1千円が、扶養控除の廃止によって23年分の税額から控除できなくなった
中学生以下の子供一人あたりの金額です。
Aさんの場合、中学生以下の子供が2人ですので、それを2倍にして14万2千円というわけです。

なお、所得税では、所得に応じて税率が変わる超過累進課税制度が採用されており、
所得と税負担の増額部分が単純な比例関係にあるわけではありませんので、
所得の増加により税率が上がる場合、税負担の増加率も上がるという点に注意が必要です。
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また、このほかに16歳以上18歳以下の扶養親族(22年までの特定扶養親族)についても、
上乗せ部分25万円が廃止され扶養控除額が63万円から38万円に下がりました。

これらの扶養控除の廃止による税負担増が
子供のいる世帯の家計にとって大変な負担となることは確実ですし、
憤り、困窮する方もいらっしゃると思います。

しかし、この件に関しては、単純に「増税=支出増」という図式が成り立つではありません。
子ども手当などの現金給付等がその背景にあるからです。

というわけで、次回は、
皆さんもご存知の通り混迷を極め続けている、この子ども手当を中心にお話をしたいと思います。




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上記税額を算出した計算等を以下に記載しますので、興味のある方はご覧になってください。

【家族構成】
妻(青色事業専従者)、中学生以下の子供2人

【収入(所得)】
総所得金額等(※1) : 350万円(※2)
※1・・・純損失・雑損失等の繰越控除後、所得控除前の所得金額(確定申告書の⑨)
※2・・・給与所得者の方の場合、年収500万円前後に相当します

【社会保険料等】
・国民健康保険 : 所得割額 152,160円(※3) + 均等割額 22,500円 = 174,660円
※3・・・総所得金額等 350万円 -基礎控除額 33万円 ×税率 4.8%
・国民年金 : 月額 15,020円 × 12ヶ月 = 180,240円
・生命保険 : 年額150,000円と仮定

【22年分所得税】
課税所得金額 1,955,000円(※4) ×税率 10% - 97,500円 = 98,000円
※4・・・総所得金額等 3,500,000円 - 社会保険料控除 354,900円 - 生命保険料控除 50,000円 - 扶養控除 760,000円 - 基礎控除 380,000円 

【22年分住民税】
所得割額 209,500円 + 均等割額 4,000円 = 213,500円
★所得割額 : 課税所得金額 2,120,000円(※5) ×税率 10% - 調整控除 2,500円 = 209,500円
※5・・・総所得金額等 3,500,000円 - 社会保険料控除 354,900円 - 生命保険料控除 35,000円 - 扶養控除 660,000円 - 基礎控除 330,000円 

【23年分所得税】
課税所得金額 2,715,000円(※6) ×税率 10% - 97,500円 = 174,000円
※6・・・総所得金額等 3,500,000円 - 社会保険料控除 354,900円 - 生命保険料控除 50,000円 - 扶養控除 0円 - 基礎控除 380,000円 

【23年分住民税】
所得割額 275,500円 + 均等割額 4,000円 = 279,500円
★所得割額 : 課税所得金額 2,780,000円(※7) ×税率 10% - 調整控除 2,500円 = 275,500円
※7・・・総所得金額等 3,500,0,00円 - 社会保険料控除 354,900円 - 生命保険料控除 35,000円 - 扶養控除 0円 - 基礎控除 330,000円

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